内痔核の治療には保存療法と手術療法があります。手術療法には、メスを入れて切り取る観血療法と切らずに治す非観血療法があります。
前のページで内痔核の保存療法と手術療法のうち非観血療法を、このページでは観血療法について説明します。
内痔核根治術といえば、ふつうは内痔核を結紮し切除する方法(右図1
)をさします。
1980年より前は、肛門手術といえば内痔核のできる肛門粘膜部を痔と一緒にすべてきりとり、残った直腸側と皮膚をぬう手術が一般的でした(ホワイトヘッドの手術 右図2
)。ぬったところがひきつれたり感染したりすることが多く(右図3a,b
)、手術後も痛くて大変でした。
術後しばらくたって直腸粘膜が脱出する粘膜脱をきたすこともあり(図3c
)、いまではされることはありません。痔の手術はひどく痛む、と昔はいわれていましたが、この手術法が理由だったのです。
今は痔核のある箇所だけきりとり、できるだけ肛門の粘膜を温存するような手術をします。
まず麻酔をかけ手術の体位をとります(肛門手術での麻酔法や手術体位については「飯原医院ウェブサイト」の「よくある質問」のページを参照してください)。麻酔がよく効いていることを確認してから手術開始です。
痔動脈に針糸をかけます。内痔核の外側の皮膚を含めて、切開します(図4-1
)。
ついで切開した皮膚粘膜を上に向かって持ち上げるようにはがしていきます。肛門括約筋がうすく見える深さで入っていきますので、おしりのしまりが悪くなることはありません(図4-2
)。
最終的に内痔核をふくめた皮膚粘膜を弁状にはがしとり、その根本を糸でくくり切り取ります。内痔核が大きく、多数ある時は切除した端から粘膜の下をすくうように痔核だけきりとります(図4-3
)。肛門粘膜をできるだけ残すことが大事で、とりすぎると術後の痛みの原因になったり、肛門が狭くなることもあります。
痔が三カ所あれば、それぞれ結紮切除します(図5
)。このまま創部をあけっぱなしにしておく(開放術)ときもありますが、術後の出血の予防に粘膜側は縫い合わせる(半閉鎖術)のがふつうです(図4-4
)。ちなみに、縫合糸は合成吸収糸を使いますので、抜糸はしません。
切除するための道具にメス以外で超音波メスや半導体レーザーなどが使われるようになり、手術後の痛みの軽減にはつながっていますが、結紮切除術の基本は今も昔も変わりません。
内痔核の麻酔に多い合併症としては腰椎麻酔後頭痛症、尿閉があります(図6/1-2
)。内痔核手術後のおもな合併症としては、出血、感染、排便障害があります(図7/3-5
)。詳しいことは「飯原医院ウェブサイト」の「よくある質問」のページにも解説していますので参考にしてください。
1998年内痔核の外科治療として、従来の結紮切除とまったく違った考えの手術がイタリアでで開発されました(PPH/Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)。最後にこの方法について説明します。
「内痔核は上直腸動脈から血流をうけているなら、上からの血流を遮断すれば、内痔核を治せるのではないか?また、脱肛も腸を上にひきあげれば外へ出てこなくなるのでは?」(図8
)
肛門鏡を入れてから、腸の粘膜から粘膜下組織までを自動吻合器でリング状に切除し吻合します(図9
)。ホッチキスのように縫い込んだ後で、器械に内蔵されたカッターで一瞬に切り取ります。直腸が短縮し上方へ引き上げられるので、脱肛に有効です。
ただし、仙骨硬膜外麻酔やサドルブロック麻酔ではできません(日帰り手術は困難、ということ)。また、腸を切除する長さや深さにより、思わぬ合併症(膣に穴が開いた例など)をまねくこともあります。手術そのものが新しく、また痔核そのものを切除するわけでないので、長期の経過をみたときの再発率も不明な点が多いのが実際です。
良性疾患の治療に自動吻合器(本来は直腸癌の治療のため開発されたもの)を使う必要があるのかどうか、は議論を呼ぶところです。もちろん、2006年現在、保険診療の適応はありません。発想はユニークですが、この方法がスタンダードになるかどうか、は疑問です。