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肛門その他1 直腸脱

本文中の図の解説方法
  1. 直腸脱とは
  2. 直腸脱 性差
  3. 肛門挙筋
  4. 不完全直腸脱 完全直腸脱
  5. 直腸脱の手術原則
  6. Gant Miwa Thiersch
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直腸脱の診療

肛門部三大疾患の痔核、痔瘻、裂肛についで、手術が多い病気の一つが直腸脱(ちょくちょうだつ)です。脱肛が内痔核の脱出(図1右マウス)であるのに対し、ことばのとおり直腸が脱出する病気(図1左マウス)で、ほとんどが高齢の女性におきます。女性では同時に子宮脱もともなうこともあります(図2マウス)。

原因

直腸は肛門挙筋(図3赤マウス)により骨盤から下へ下がらないように支えられています。この支持が失われると、肛門や直腸が本来の位置から下がってきます。

出産経験の多い高齢女性に多いのは、出産により骨盤底の筋肉が弱くなるため、と考えられています。その他外肛門括約筋が弱い、腹腔内の直腸子宮間のポケットが深い、直腸が短いなども原因となり得ます。直腸のポリープや内痔核脱肛など、脱出する病気を放置することも原因の一つです。

分類

図4マウスのように、脱出の程度に応じて(a)不完全直腸脱、(b)完全直腸脱に分類されます。

  • 不完全直腸脱=直腸粘膜のみの脱出
  • 完全直腸脱=直腸全層の脱出

症状

初期では、排便時のみの脱出ですが、進行してくると立っているだけで肛門が腫れてきます。排便後に手で押し込まないといつまでも腫れや痛みがつづき、下着に触れて出血するようになります。

完全直腸脱は内痔核脱肛との違いは明らかです。不完全直腸脱の早期のものは脱肛との鑑別のため、肛門科を受診しましょう。

治療

直腸脱は手術が必要です。手術の方法としては2つのアプローチがあります(図5マウス)。

  1. 経腹的=直腸の上から持ち上げる方法
  2. 経肛門的=直腸を下から押し戻す方法

直腸脱の原因を考えれば、1のほうが理にかなった方法です。しかし全身麻酔が必要でお腹を切る大きな手術になりますので、従来より2の経肛門手術が好まれてきました。

経肛門手術の実際

肛門輪縫縮術は肛門管の周囲を糸で縫い縮める方法(図6Aマウス Thiersh method)です。肛門周囲をはがし、ナイロン糸などで輪を作ってしめます。締め方に多少のコツはいりますが、一番簡単な手術です。

これに加えて、肛門の粘膜を絞り染めの要領で、少しずつ縫い縮める方法(図6B Gant Miwa methodマウス)も併用されることがふつうです。手術時間も15分くらいのかんたんな手術で、麻酔法の工夫で日帰りや一泊入院での対応も可能です。ただし、手術後の安静と排便のコントロールは重要です。

近年 上に述べた方法以外にも 直腸癌・肛門管癌で肛門を温存する術式を利用した方法=直腸あたりの余剰腸管を剥離して縫い縮めたり、腸管そのものを切り取って自動吻合器を用いて繋ぐ方法も試みられています。まだまだ一般的ではありませんので 先生とよくご相談してください。

経腹的手術の現在

2010年ごろより、経腹手術を腹腔鏡を用いて行う方法を好む施設も増えてきています。(多くの場合に)高齢の患者さんに全身麻酔をかけ、手術時間も長くなることは変わりませんが 再発も少ないので(特に子宮脱も併発しているような方には)全身の状態が良好であれば お勧めです。

経腹手術はもちろん入院も必要です、日帰り手術での対応は不可ですから肛門科クリニックではなく 腹腔鏡手術ができる地域の基幹病院の消化器外科を受診してください。

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