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大腸炎7 感染性大腸炎

本文中の図の解説方法
  1. 感染性大腸炎 症状
  2. 感染性大腸炎 診断
  3. 輸液療法
  4. 感染経路

ウイルスや細菌、寄生虫など、いろいろな病原体で下痢などの症状を呈するものを感染性腸炎とよびます。病原体は昔と今ではずいぶんと変わってきました(図1マウス)。

症状

水様下痢、腹痛、発熱、吐き気がつづき、脱水症状が出ます。血便もよく認められます。おのおのの病原体に特徴的な症状はなく、便の細菌培養(図2マウス)や血液検査などで確定診断となります。

下痢の機序には(1)病原体が腸粘膜に直接侵入し下痢をおこす(2)病原体の出す菌毒素により下痢がおきる、の二つが考えられます。

基本的な治療は脱水について輸液を行うこと(図3マウス)ですが、感染力の強い病原体が原因になっているときには、家族や隣人に感染させないよう入院する必要があります(図4マウス)。感染症法に基づき、国あるいは都道府県により指定医療機関がさだめられています。

ここでは大腸で代表的な感染性腸炎についてかんたんに解説します。

細菌性腸炎

細菌性赤痢

Shigella菌による腸炎で潜伏期は1−5日です。炎症は大腸粘膜に限局しますが、下部大腸に強い傾向があり内視鏡では潰瘍性大腸炎に似ています。

サルモネラ腸炎

Salmonellaが大腸粘膜下組織まで侵入し、深い潰瘍をつくります。潜伏期間は1−2日で、右半結腸を中心に炎症がおきます。

キャンピロバクター腸炎

大腸全体の粘膜が赤くアフタがみられます。ときに回腸末端にも炎症が及びますが、多くは短期間に治癒します。

病原性大腸菌腸炎

食中毒になる大腸菌を病原性大腸菌とよび、臨床症状で分類されています。一番重症化しやすいのは、腸管出血性大腸菌(EHEC)で、その代表がハンバーガー食中毒としても有名なO157です。なお、ふつうの大腸菌は健康人の大腸に常在しています。

右半結腸を中心に強い炎症がおき、免疫力の弱い老人や小児でときに重篤化します。菌毒素=ベロ毒素の働きにより、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)がおこります。多くは抗生物質に反応し、治癒します。

その他の細菌性腸炎

エルシニア腸炎は回腸末端に好発し、円形潰瘍や縦走潰瘍をきたすこともあり、クローン病の小腸型との鑑別が重要です。腸炎ビブリオ腸炎回盲部で炎症をおこし、回盲弁にびらんを認めます。

寄生虫性腸炎

上部消化管で腸炎の元になる寄生虫といえばアニサキスが有名ですが、大腸粘膜への虫体の侵入は稀です。日本住血吸虫症は虫卵を生検で認めることで確定診断となります。

ホタルイカの生食で旋尾線虫による腹痛・腸閉塞をおこすことがあります。これは例えばサバやイカによるアニサキスとは比べものにならないほど高率ですので ホタルイカを生で食べないことが一番重要です。

赤痢アメーバ

原虫(Entameba histolytica)による腸感染症です。従来は熱帯、亜熱帯への旅行者の病気でしたが、最近は性感染症(男性同性愛者)に増えている、という報告もあります。

直腸や右側結腸に多く、当初は小さなアフタから始まり、徐々に多彩な潰瘍をきたします。重症例では潰瘍性大腸炎との鑑別が必要です。診断は、生検でのアメーバ原虫の確認です。

ウイルス性腸炎

サイトメガロウイルス

サイトメガロウイルスは潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、免疫不全状態で発見されることがあります。一見すると潰瘍性大腸炎と鑑別に悩む例も多く、診断に難渋することがあります。ステロイドや免疫抑制剤の使用でさらに増悪します。

 
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