クローン病での肛門病変について

クローン病では肛門周囲膿瘍や、痔瘻などの肛門疾患を高率に合併します。腸管症状が乏しい時期に、難治性の痔瘻を発症し、その後腹痛などを発症することでクローン病と診断がつくことも少なくありません。

再発をくり返したり、何回も手術が必要となるような肛門疾患では(とくに若い男性では)、クローン病の合併を考える必要があります。

肛門病変の種類

  1. 肛門周囲膿瘍
  2. 痔瘻
  3. 痔核
  4. 裂肛
  5. 皮垂

図1 これらのうち、3,4,5は通常の(クローン病でない)症例と、治療の方針や手術成績はあまり変わりません。しかし、1,2は難治性で再発が多い特徴があります。

とくに直腸病変が肛門に及んだときは、直腸狭窄などをともない治療に難渋します。

クローン病の痔瘻の特徴

痔瘻のトンネルが通常の痔瘻と異なります(図2)。

  1. トンネルの走行が複雑
  2. トンネルが多発
  3. トンネルが浮腫状で切開後の治癒傾向が悪い

痔瘻の治療方針

肛門の病変は生活の質を下げますので手術をおこないます。ただし、痔瘻の走行が複雑、多発するために、頻回の手術で肛門括約筋の機能を損傷するおそれがあります。このため、通常の痔瘻の手術でおこなうような括約筋温存手術はおこなわず、seton法(図3)が多く用いられます。

再発をくり返し治療に難渋する場合は、最近は抗TNFα抗体のレミケードを使うこともあります。ただし、高価な薬ですので安易に用いるのではなく、適応は十分考えなければなりません。

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