新しい硬化療法

内痔核の粘膜下、および粘膜固有層へ注入することにより、内痔核周囲の線維化、退縮をさせます。硬化療法の一種になります。

ひとつの痔核について、4回に分割して注射をします。主成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸で、強力な組織障害作用をもちます。腰椎麻酔や仙骨硬膜外麻酔など麻酔を十分して肛門括約筋を弛緩させて、注射を適切な部位にしなければなりません。

フェノールアーモンド油(PAO)を用いた従来の硬化療法と比べると、手技が複雑で合併症もあることから、2006年にはごく限られた肛門科(保険診療不可の施設も多い)でしか行われていませんでした。

以下のデータは、販売元の添付文書より抜粋したものです(全例で85例の小規模臨床成績です)。

投与法

投与する部位、量は

  1. 痔核上極 粘膜下層 3ml
  2. 痔核中央部 粘膜下層 2-4ml
  3. 痔核中央部 粘膜固有層 1-2ml
  4. 痔核下極 粘膜下層 3-4ml

主な成績

括弧内の数字は従来の手術法、根治術の成績です(施行後28日)

  • 脱出消失 94% (99%)
  • 出血消失 94% (99%)
  • 痔核の縮小 54% (95%)
  • 自発痛消失 95% (72%)

従来の硬化療法とくらべると、早期から症状の消失を認めます。

合併症 副作用

  • 肛門部疼痛 49% (95%)
  • 肛門部浮腫 20% (51%)
  • 肛門部硬結 76% (6%)
  • 肛門部出血 6% (64%)

痛み、出血はやはり手術とくらべると少ない傾向があります。(ただし、従来の硬化療法とくらべれば、痛みや浮腫はあきらかに多いようです。)

術後1年での再発率

術後1年目での再発率は、手術例では2%ですが、ジオン注では16%と高くなっています。従来の硬化療法とくらべれば良い成績ですが、再発率は手術よりは劣る、と考えられます。

痔核は良性の病気ですので、術後3年、5年、10年といった長い経過を見る必要があります。長期予後がどうなるか、今後の検討が求められます。

治療上の重要な注意

やはり通常の硬化剤=フェノールアーモンド油(パオスクレー)と比べ組織障害性が強いため、以下のような合併症や副作用の報告も見られます。

  • 前立腺炎、副睾丸炎、睾丸炎
  • 痔核壊死
  • 肛門部疼痛
  • 硬結
  • 直腸筋層壊死
  • 直腸狭窄

これらの合併症は頻度は少ないものの、通常の硬化療法や手術ではまずおこりえないものです(症例数が増えてくれば減ると思われます)。

その後のジオン注射の位置づけ

治療が導入されて5年以上経過して、症例検討が重ねられるようになり 今では熟練した肛門科医が施行すれば安全な治療法とされています。上記の重篤な合併症も2013年現在にはあまり見られなくなりました。

なによりも やはり切除と比べると術後の合併症頻度は明らかに少ないことが好感され いまでは痔核両方のファーストチョイスとしている施設も増えています。ただ、逆に本来なら切除しなければ治らないような重度の痔核に安易に用いられる傾向も出てきているようです。

根治手術をまったく行っていないような施設では治療の適否判断がおろそかになっている恐れがあります。よく医師と相談されることをお勧めします。

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